ストレスと血清尿酸値
今日は「ストレスと尿酸値」の関係についてお話させて頂きます。
尿酸は、蛋白質の一種であるプリン体から産生される老廃物です。産生された尿酸は腎臓から尿中へ排泄されますが、プリン体やアルコールを大量に摂取すると血液中の尿酸値が上昇することが知られています。
通常、血液中の尿酸値は7.0mg/dl以下が正常でこれを超えた状態を高尿酸血症と呼びます。高尿酸血症の状態が数年続くと関節内に尿酸塩結晶が溜まって痛風発作と呼ばれる急性関節炎を引き起こします。
痛風と言うと「王様の病気」、「贅沢病」と少々誤解を招くような呼び名があるため年配の人の病気という印象をお持ちの方も多いと思いますが、実際には30歳代が発症のピークとなり20歳代の痛風も珍しくない比較的若い方の病気です。
かつては日本では珍しい病気と言われた痛風は年々増加して最近では成人男性の5人に1人は痛風予備軍と呼ばれるほどになっています。それでは、どうして高尿酸血症や痛風の方が増加しているのでしょうか。
前にお話したように尿酸の原料はプリン体ですからプリン体を大量に取ると尿酸値は上昇してしまいます。プリン体は細胞の核の中に含まれますので動植物を問わず食物にはプリン体が含まれています。特に細胞の豊富な肝臓などの内臓や肉、魚などはプリン体を沢山含む食品です。それから、肉や魚などで出汁を取ったスープにもプリン体が沢山含まれています。食品中やアルコールのプリン体含有量などについてはまた次の機会にお話させて頂きますが、焼肉やとんこつスープのラーメンなどは高プリン食と言うことになります。 これらの食事を好んでとりお酒も沢山召し上がるような方は尿酸値が高くなりやすいと考えられます。
そしてもう一つ尿酸値の上昇に深く関わっているものとしてストレスが上げられます。
以前から仕事が忙しかったり重要なイベントや旅行、出張などの際に痛風発作を起きることは知られていましたが、これがストレスによる尿酸値の上昇とも関係があるらしいということが分かってきました。
商社にお勤めのY氏は、以前から健康診断で高尿酸血症を指摘されていましたが別に自覚症状が無かったことや忙しかったこともあり放置してきました。大きな商談がいよいよ詰めの段階で連日の残業や接待などで不規則な生活が続いていました。いよいよ今日が大事なプレゼンテーションという朝、出張先のホテルで足の拇に激しい痛みを覚えて飛び起きました。見ると拇の付け根が真っ赤に腫れ上がっています。
中小企業のオーナー社長であるI氏も多忙な日々を過ごしていました。今日は久しぶりの休日同業の仲間とゴルフに出かけました。寝不足気味でしたが早朝からゴルフ場へ出かけました。梅雨の晴れ間の絶好のゴルフ日和です。お昼頃からは気温も急上昇して大量の汗をかきながらのラウンドとなりました。ドライバーも好調でまずますのスコアです。ゴルフの後はサウナに入ってビールで乾杯!!上機嫌で帰宅して翌朝お決まりの痛風発作を起こしてしまいました。
Y氏の場合は、不規則な食生活とストレスが原因となって血清尿酸値が急上昇したことがお分かり頂けると思います。I氏の場合は、運動や脱水、ビールによる高尿酸血症が原因と考えらますが、これにストレスも加わると言うと意外な感じがするかも知れません。ストレスと言うと嫌なこととか精神的な負担のような負のイメージが強いのですが、実は楽しいこと嬉しいことなどの精神的な高揚感もストレスとなるのです。
このことを裏付ける研究報告が鹿児島大学から出ています。鹿児島大学の内科の医局ゴルフコンペ前後での参加者の血清尿酸値を測定した結果、ゴルフコンペ前日からすでに血清尿酸値が上昇している医局員が多いことが分かりました。このことから実際の運動や飲酒、ストレス以外でも精神的な高揚などにより血清尿酸値が上昇することを示しています。
明日から旅行だとか結婚式の前日などに痛風発作を起こしてしまう方を時に拝見しますが、同じような精神的な高揚が原因となっていることが考えられます。
もちろん普段から高尿酸血症のない方は、一時的に血清尿酸値が上昇したからといって痛風発作を起こす心配はありません。健康診断などで高尿酸血症を指摘されている方は日頃から食事や飲酒などの生活習慣に気をつけたり必要に応じて尿酸降下薬の服用により適切な尿酸コントロールを行うことで大事なときに痛風発作をおこしてしまわないようご注意をお願い致します。
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