痛風メーリングリストにおける医療情報の提供
はじめに
平成12年7月から痛風・高尿酸血症患者、家族と医師、薬剤師、栄養士、保健婦などの医療関係者からなる「痛風メーリングリスト(以下GMLと略する)」を運営している。
開設後2年半がたち現在の会員数は、約230名、総メール数は約2000件であった。
目的
GMLにおける患者・家族の医学・医療情報の利用にあたって、従来からのメディアを利用した場合や対面診療のみの場合と比較し、メーリングリスト(以下MLと略する)がどれほど有効なものなのかを分析するとともに、情報提供の在り方やより有効な活用法を探ることを目的とする。
メーリングリストの仕組み
MLとは、電子メールの送信、受信機能を応用したもので、ある一定の興味ある話題に関して、リストに載った登録者全員がタイムラグを感じることなく、情報交換や議論、討論できるシステムである。
MLでは、ある特定の宛先にメールを送るとそのメールは登録者全員に配送される。送信されたメールに返信をすればそのメールもまた登録者全員に送られるので、複数同士でのメールのやり取りが簡単に実現できる。
更に投稿された全ての文章はデーターとして蓄積され、インターネットでWEBページとして読むことが可能となり日々蓄積されていく膨大な量のデーターの中から語句や複数の語句が含まれる投稿を検索して必要なメッセージだけを表示させる事が出来る。
大量のデーターの中から高速で検索出来るように、全文検索システムというプログラムを用いてあらかじめ投稿されたメールの中の単語を調べ、どの文書ファイルにどの単語が含まれているかを書き出したインデックスを作成しておいて、検索時に時間を掛けずに素早い検索を可能にさせている。
メンバーの登録管理は、参加希望者が直接管理人にメールで参加希望の旨を伝え、管理人がメールを使って登録、削除を行なうのでメンバーのアドレス、個人的なデーターの流出することはない。
また、メールに寄るウイルスに対応するために、現在は添付ファイルのついた投稿は、GMLに投稿しても、メンバーに送信しない設定になっている。その為、MLの欠点であるウイルスの対策には非常に有効であるが写真画像などをメンバーから送ることは不可能である。必要な場合は、WEBサーバーにアップして、LINKアドレスを投稿する等で対応可能である。
以上のように、MLは登録を済ませた限定的なメンバーだけが参加しているので、特定の小人数の間で比較的プライベートな目的に使われることが多く、登録者には積極的な参加と発言が求められ、give and takeを原則とした情報交換が要求される。
公開と加入方法
GMLは、両国東口クリニックのウェブサイト上で公開されているMLであり、ML専用サーチエンジンには登録していない。痛風・高尿酸血症の医療情報入手を目的として当ウェブサイトを訪れた患者、家族が入会を希望する場合とメールによる痛風医療相談者へ参加を勧めている。医療関係者については、知り合いの医師、薬剤師、栄養士の他、痛風医療相談者の中から参加もある。
加入方法は、ウェブサイト上に参加申し込みフォームを設置(こちら)しているが、痛風・高尿酸血症患者以外の登録を避けるため病歴などを質問した上で手続きは管理者が手動で行っている。
結果
平成15年1月27日の時点で会員数は231名、会員の内訳は、時期によって多少の変動があるが、管理者を含めて医師5名、薬剤師5名、栄養士3名、看護師3名、保健婦その他の医療関係者3名でその他は痛風・高尿酸血症患者と家族である。
(グラフ1) 会員数の内訳
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患者、家族の割合は、約9:1で家族では患者の妻の参加が多い。総メール数は、1997件、メール内容の内訳は、発言者別では管理者が、878件(44%)、その他の医療関係者が、80件(4%)、患者、家族が、1039件(52%)であり、
(グラフ2) 発言者の内訳
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内容別では、質問と回答が、48%、報告と体験談が、30%、情報提供が、5%、その他が、17%であった。
(グラフ3) 発言内容の内訳
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結語
MLによる医療情報の提供は、双方向性(主治医以外のセカンドオピニオンなど)、利便性・迅速性(海外からの投稿など)、開示性、メンタル的ケア(拠り所としての安心感、同病者との心の連帯感)などの利点がある一方、文書・画像による診療の限界、信頼性の問題、プライバシーの問題などの問題点が上げられる。しかし、痛風などの長期に渡っての治療や日常生活のケアを必要とする疾患では、MLが極めて有用な治療手段となり得ると考えた。
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