リウマチ外来

リウマチ外来をお受けになる方へ

「関節が腫れていたい」「こわばって思うように動かない」 
以前はこの様なつらい症状は一生付き合わなければならない時代もありました。
しかしリウマチ医療は近年新薬も開発され、痛みをとるだけでなく関節破壊の進行を抑制し、その状態を維持させるための治療に変わっています。

そのためにまず関節リウマチについて知ることが治療の第1歩です。
専門医、看護師、管理栄養士、臨床検査技師が治療のお手伝いをいたします。これから一緒に学んでいきましょう。

リウマチ患者数は年々増加し日本での有病率は0.33%になります。
つまり300人に1人が、関節リウマチになっていることになります。
女性だけかかる病気と思われがちですが2割は男性です。
実際に病気が始まるのは40代がピークで、次いで50代、30代が多くなっています。  



関節リウマチと診断された年齢(社団法人に本リウマチ友の会 リウマチ白書より)

 

関節リウマチは関節が腫れ、放っておくと関節が変形してしまいます。
原因はまだあきらかになっていませんが、生活習慣病ではありません。
何らかの要因によって自己免疫が活性化して、関節に炎症が引き起こされ持続すると考えられます。
今のところ根治療法はありませんが薬物療法により関節破壊を抑えるだけでなく関節修復の可能性もあります。

以前は、関節リウマチを発症しても最初のうちは痛みや腫れがあるだけで、関節の破壊が進むのはずっと後、10年くらい経ってからだろうと考えられていました。
しかし、発症してから1〜2年のごく早い段階で、関節破壊が進むことが明らかになり、できるだけ早い段階で治療を始めることが大切だということが分かっています。

 


関節内での変化

正常 浮腫 軟骨、骨破壊 骨の強直

 

関節が破壊される仕組み

滑膜(カツマク)という関節の最も内側にある膜が厚くなって、腫れあがってきます。関節がなめらかに動くために、油の役目をしている関節液をこの滑膜はつくっているのです。この滑膜が腫れてくると、この関節液を異常に多く産生するようになり、いわゆる関節に水が溜まってきて、腫れや痛みが出てきます。そして、長期間にわたって腫れてくると、関節が壊れ始めてくるのです。
体の中の免疫細胞が、関節の滑膜を異物と認識して攻撃します。

関節リウマチの症状

関節症状

関節リウマチでは、関節の腫れや痛み、こわばり、変形などの症状が起こります。
症状の程度や、症状が出ている関節の数は建設リウマチの病状を知る上で重要になってきます。

朝のこわばり

朝起きてしばらく関節が思うように動かないことです。
朝のこわばりが長時間続く場合は症状がひどいといえます。

関節の腫れ・痛み

安静にしていても痛む「自発痛」、押すと痛む「圧痛」、動かすと痛む「運動痛」があります。関節が腫れたり、赤くなったり、熱をもったりします。また、左右対称に症状が出るのが特徴です。

●痛みが起きやすい関節

第2.関節、第3関節、手関節に症状が出ることが多いです。その他に肘、膝、足関節にも症状がでます。

変形

炎症が続くと関節付近の軟骨や骨が変形し、動かせる範囲が狭くなってきます。
さらに進んで関節の骨同士がくっつくと関節が動かなくなってしまいます。

●特徴的な関節の変形

スワンネック変形 ボタン穴変形 尺側偏位  Z型変形  外反母趾    

全身症状

関節リウマチは全身性の病気です。

皮下結節 だるさ・疲労感

皮膚の下にこぶ上のしこりができる
肘や膝など圧迫されやすい部位にできやすい

微熱や食欲がなくなり、体重が減少する
貧血 肺の炎症

息切れや呼吸困難をきたす
目の炎症 血管の炎症(リウマチ性血管炎) 

胸膜に炎症がおこり角膜の充血や目の痛みが起きる

血管の炎症によって酸素や栄養が充分いきわたらなくなり、様々な臓器に障害が現れる

主な関節リウマチの検査

血液・尿検査

リウマチ診断時に行われる血液検査

●リウマトイド因子
●抗CCP抗体(好環状シトルリン化ペプチド抗体)
日常的に行われる血液検査
●赤沈(赤血球沈降速度)、血沈ともいいます。
赤血球が沈む速度を調べる検査です。炎症が起こると増加します。
●CRP(C反応性たんばく)
体内で炎症がおきると肝臓でつくられるC反応性たんぱくのことです。
●MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ-3)
関節の破壊が進むときに出される酵素です。

血液一般検査について

血液一般検査とは、血液中の血球細胞(白血球、赤血球、血小板など)の数を調べる検査で、「血算」とも呼ばれます。関節リウマチの活動性をみるほか、関節リウマチにともなう内臓の異常や薬の副作用などをみるために、定期的に調べられます。

●白血球の数
炎症が強くなったり、ステロイド薬の影響があると増加します。
●赤血球の数、ヘモグロビン値
関節リウマチでは貧血をともなうことが多いため、赤血球とヘモグロビンの値はくり返しチェックする必要があります。
●血小板の数 
病気の活動性が高く治療に対して激しい抵抗性があると、極端に多くなることがあります。逆に減る場合は、薬による副作用が考えられます。

尿検査

尿検査では、尿蛋白や尿糖など検査します。
他の病気との鑑別や、副作用、合併症の有無を調べます。

関節液検査

関節液を採取して、炎症の程度や他の病気との鑑別を行います。

関節リウマチで実施する主な画像検査

関節疾患は血液ひとつで診断がつくものではありません。
問診、診察、X線検査、血液検査、超音波検査やMRI検査で得られる情報をもとに総合的に診療を行う必要があります。たとえ症状がなくても患部では炎症が起こっている場合も多々あるのです。早期診断のため、あるいは治療によってしっかりと関節の炎症が抑えられているかを確認(寛解判定)するために実施する主な画像検査をご紹介します。

X線(レントゲン)検査 

患部の関節や骨の破壊の程度を調べます。
関節付近の骨吸収像(骨がもろく見えること)、関節列隙の狭小化(関節の隙間が狭くなること)、関節びらん等が観察されます。
また関節以外にも症状の出やすい肺の病変(感染症・治療薬による副作用によるものも含む)を調べるために胸部X線を行うこともあります。当院にて行っております。

 

MRI検査

MRI用造影剤を使うと活動性の滑膜が造影剤で増強されて描出され、単純X線では認識できない滑膜の肥厚や骨の侵食、腱の状態などを観察できます。X線検査では捉えにくい滑膜の炎症やわずかな骨の変化を捉えるのに有用な検査です。人工関節などの金属が入っている方は受けることはできません。

 

超音波(エコー)検査

当院で実施可能な検査です。観察する部位にゼリーをつけて探触子(プローブ)と呼ばれる装置をあてるだけです。
超音波が届かないために観察できない部位もありますが、放射線被爆はなく、無痛で、体内に人工関節などの金属がある方、閉所恐怖症の方でも実施可能です。
観察する関節の部位や数にもよりますが、検査の所要時間は10 分〜30 分程度です。関節以外にも症状の出やすい心臓も検査をすることがあります。

 

関節超音波検査

関節リウマチがひきおこす滑膜の炎症を直接観察する検査です。
X線画像では検出できないわずかな骨の変化をとらえることができる場合もあります。
より早期に関節リウマチを診断するため、また薬物治療によってしっかり関節の炎症が抑えられていることを確認するため(寛解判定)に有用です。たとえ症状がない関節でも潜在性の滑膜炎が指摘されることもあります。

正常関節

骨の上の青で囲まれた領域が滑膜です。
炎症があるとパワードプラ法では異常血流を示す赤色が見られ滑膜も肥厚してきますが、正常関節ではそれらは見られません。

滑膜炎

基本画像と左右の画像を照らし合わせてみてください。
青い部分が著明に肥厚した関節滑膜、★印(基本画像では黒い箇所)は滑液が貯留しています。パワードプラ法では異常血流を示す赤色が豊富に見られます。

骨びらん

炎症が起こることで骨が破壊され、骨びらん(△)を認めます。パワードプラによる血流と滑膜肥厚を伴う骨びらんは関節炎に特異性の高い所見といわれています。

関節リウマチの治療目標

リウマチの症状・兆候が消失する「寛解」を目指します。そのためには痛みをとり、関節破壊の進行を抑え、生活機能が改善することが重要です。

関節リウマチの治療法

関節リウマチの基本の治療は、病状をやわらげ、病気の進行を抑える薬物療法、同時に病気を悪化させないようにする生活上の注意や、関節や筋力を衰えさせないリハビリテーションを行います。生活に支障をきたしている場合、薬で痛みを抑えられない場合は手術が行われます。

薬物療法

最近は、病気の初期から抗リウマチ薬を使い、効果が不十分なら生物学的製剤を使用します。また、炎症による腫れや痛みには非ステロイド性抗炎症薬、ステロイドが使用されます。

●抗リウマチ薬(DMARDs)
関節リウマチの原因である異常な免疫細胞に作用して病気の進行を抑えます。間質性肺炎や感染症、肝、腎障害などを引き起こす恐れがあります。

●生物学的製剤
新しい治療薬です。炎症を引き起こすタンパク質に作用して関節破壊が進行するのを抑えます。注射(皮下注射や点滴)で投与します。重篤な感染症や注射部位反応(注射部位の腫れ痛み痒みなど)、脱髄疾患、心疾患が起こる恐れがあります。

●非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
関節の腫れや痛みを和らげる働きがあります。即効性はありますが、関節の炎症を根本から取り除くことは出来ません。長期間服用すると胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる恐れがあります。

●ステロイド
強力に関節の腫れや痛みを和らげる働きがあります。炎症がなかなか改善しないときに用いられます。長期間服用すると感染症、糖尿病、骨粗鬆症などを引き起こす恐れがあります。

リハビリテーション

関節の痛みや炎症は薬で抑えることが出来ますが、関節を動かさずにいると関節や筋肉、腱などの機能が衰えてしまいます。リウマチ体操など運動を取り入れましょう。


手術

関節の機能が衰え、生活に支障をきたした場合や薬を飲んでいても痛みが和らがない場合は手術をします。

日常生活

日常生活では体調管理にお気をつけ下さい。特に抗リウマチ薬、生物学的製剤、ステロイドを投与している患者様は感染症にかかりやすくなっています。感染予防を行って下さい。また、関節に負担をかけないように心がけましょう。

日常生活で心がけていただきたいこと

●無理をしない
●規則正しい生活を心がけ睡眠を十分にとる
●人ごみを避ける
●外出時にはマスクを着用し、手洗いうがいを習慣付ける
●いらいらせず、ゆっくりとした気分を心がける
●お酒はやめる

関節を守る日常生活での工夫

関節を冷やさないよう冷房は控えめに。首への負担を少なくするため良い姿勢を心がけましょう。

買い物などではキャリアーを利用しましょう。



家事をしやすいように、例えばキッチンなどを工夫しましょう。
座りながら仕事が出来るように椅子を用意する。
動かしやすいワゴンを活用しましょう。
蛇口をレバーハンドル式に変えましょう。

起床時に起き上がりやすいのでベッドのほうがお勧めできます。

和式より洋式のほうが関節に負担がかかりません。また壁に手すりをつけるとより効果的でしょう。

うつむき加減で本を読んだりすると、首や肩の痛みの原因になります。30分以上うつむいた姿勢を続けることは避けてください。

リウマチ体操 関節のこわばりを予防するための運動です

足の体操             

首の運動



手指の運動


手の指でつまむ運動               

握力の運動

手首の運動 


※ 運動は根気よく、無理をしない程度に毎日続けましょう。 

 

医療コラム