高尿酸血症・痛風治療のガイドライン

第1章緒言第2章定義および評価第3章治療第4章合併症、併発症に対する治療第5章生活指導

第3章 治療

1.治療目的と治療計画

  1. 痛風・高尿酸血症の治療目的の1つは、痛風関節炎の発症を防ぐことである。この点に関して血清尿酸値を4.6~6.6mg/dlにコントロールしたときが最も痛風関節炎の発症率が低いという成績がある。 

  2. 尿酸沈着による合併症である腎障害(痛風腎)や尿路結石を発症、進展させないことは更に重要である。 

  3. 高尿酸血症が心・血管障害の独立した危険因子であるか否かが注目されているが、このような観点より血清尿酸値をどのレベルにコントロールすべきかの介入試験を行った成績はない。 

  4. 痛風・高尿酸血症に高脂血症、高血圧、耐糖能異常、肥満などの生活習慣病が高率に併発することが知られているが、これらの併発症に対する十分な配慮も治療上重要となる。 

  5. 以上の点を鑑み、血清尿酸値を6mg/dl以下にコントロールすることが望ましいと考える。

2.痛風関節炎の治療

  1. 痛風発作の前兆期にはコルヒチンは1錠(0.5mg)用い発作を頓挫させる。痛風発作が頻発する場合には、コルヒチン1日1錠を連日内服させるコルヒチン・カバーが有効である。 

  2. 痛風発作の極期には、NSAIDsが有効であるが、短期間に限り比較的大量を投与して炎症を沈静化させる(NSAIDsパルス法)。副作用の発現に注意する。 

  3. NSAIDsが使えない場合、NSAIDs投与が無効であった場合、多発性に関節炎を生じている場合などには、経口にて副腎皮質ステロイドを投与する。 

  4. 痛賦発作時に血清尿酸値を変動させると発作の増悪を認めることが多いので、発作中に尿酸降下薬を開始しないことを原則とする。 

  5. 痛風関節炎が軽快すれば、コルヒチン、NSAIDs、ステロイドはは中止する。 

3.高尿酸血症に対する治療

A.治療目的

  1. 高尿酸血症の治療では予後に関係する肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常などの合併症も来しやすい高尿酸血症の発症に関連する生活習慣を改善することが最も大切である。 

  2. 痛風関節炎を繰り返す症例や痛風結節を認める症例は薬物治療の適応となり、尿路結石を合併した場合はアロプリノールが適応となる。 

  3. 治療中の血清尿酸値は、6mg/di以下に維持するのが望ましい。 

  4. いわゆる無症候性高尿酸血症への薬物治療の導入は血清尿酸値8mg/dl以上を一応の目安とする。 


 

B.尿酸降下薬の種類と副作用

  1. 現在本邦で使用できる尿酸排泄促進薬は3種類あるが、尿酸生成抑制薬はアロプリノールのみである。 

  2. 尿酸排泄促進薬の中ではベンズブロマロンが最も尿酸排泄作用が強い。 

  3. 尿酸排泄促進薬を使用する時は尿路結石の発現に注意する。 

  4. アロプリノールを慢性腎臓病の患者に使用する時は腎障害の程度に合わせて投与量を調節する。


 

C.尿酸降下薬の選択

  1.  尿酸排泄低下型に尿酸排泄促進役、尿酸産生過剰型に尿酸生成抑制薬(アロプリノール)を選択することを基本原則とする。 

  2. 中等度以上(クレアチニン・クリアランス値30ml/min以下、または血清クレアチニン値2mg/dl以上)の腎機能障害と尿路結石の既往ないし合併がある場合はアロプリノールを選択する。 

  3. 病型に沿わない薬剤使用時には特に副作用の発現に注意し、使用量を出来る限り少量から開始し、定期的に血液、尿検査を繰り返す必要がある。

 


 

D.痛風関節炎、痛風結節のない高尿酸血症
(いわゆる無症候性高尿酸血症)に対する治療

  1. 高尿酸血症のうち、血清尿酸値が8.0mg/dlないし9.0mg/dlを超えるものは、それ以下の症例よりも将来の痛風関節炎、尿路結石の発症率は有意に大きい。 

  2. 高尿酸血症8.0mg/dl以上が治療開始基準となるが、種々の合併症(腎障害、腎尿路結石とその既往、高血圧、高脂血症、虚血性疾患、糖尿病、肥満)、家族歴を有するものは、非薬物療法に加え薬物療法の開始を考慮する。また、合併症のない例では、9.0mg/diを超えたものに対して薬物療法を考慮する。 

  3. 種々の合併症がある症例では、それらの管理も並行して行い、水分摂取も含め、血清尿酸値を上昇させない生活を送るよう指導する。



E.痛風発作(関節炎)時と痛風間欠期の治療

  1. 高尿酸血症の薬物療法は血清尿酸値を3~6ヶ月かけて徐々に低下させ、6mg/dl以下にし、その後は6mg/dl以下に安定させる用量を続ける。


 

F.腎障害合併症に対する尿酸降下薬の使用法

  1. 腎機能の低下に応じて、アロプリノールの使用量を減ずる必要がある。 

  2. 中等度まで腎障害例ではベンズブロマロンとアロプリノールの少量併用も有効かつ安全である。


 

G.肝機能障害合併例に対する尿酸降下薬の使用

  1.  肝機能障害の患者においてはベンズブロマロン以外の尿酸降下薬を用いて治療を行う。尿酸降下薬投与時は肝機能に注意を払い、血清尿酸値を低下させる。特にベンズブロマロン使用時は、投与開始後6ヶ月間は毎月肝機能検査が義務づけられている。

 

4.高尿酸血症。痛風患者の管理

 A.尿路管理

  1. 尿アルカリ化療法は尿酸降下療法とは独立した治療と位置づける。 

  2. 高尿酸血症患者における適正な尿pHは、6.0以上、7.0未満とする。 

  3. 高尿酸血症患者で持続的に尿pHが6.0未満の場合は尿アルカリ化薬を用いた尿路管理の対象とする。 

  4. 尿pHが5.5未満の時は必ず尿アルカリ化療法を行う。 

  5. 尿酸排泄促進薬を使用するときは尿アルカリ化薬を併用する。 

  6. 尿路結石症患者や既往者では尿酸生成抑制薬で治療するが、尿アルカリ化薬も併用する。


 

B.生活習慣に関して

  1. 過食や飲酒習慣は是正し、肥満が生じないように、あるいは改善するように指導する。



C.全身の健康管理に関して

  1. 尿酸を低下させる方法によっては、それ単独で心血管リスクが低下するかどうか明かでない。優先すべきは、生活習慣の是正による、マルチプルリスクファクター全般の改善の中で血清尿酸値も低下させるように心がけることである。 

 


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ガイドライン

痛風外来