痛風発作が頻発するとき、どう治療する?

はじめに

通常、痛風発作は、母趾基節部などの単関節に1、2日間でピークとなる急性関節炎であり2週間 前後で消退し完全に消失する。この完全寛解期は初回痛風発作の場合、多くの患者では、数ヶ月から1年以上と言うことが多い。
しかし、数年間に渡って複数回の痛風発作を起こしているような患者では、1回の痛風発作が1ヶ月から数ヶ月間に及ぶ長期発作となったり数日から数週間間隔という短期間で痛風発作を繰り返すことがある。

痛風発作は単関節炎が原則ではあるが、このように短期間に痛風発作を繰り返す患者では、一つの発作が完全に消退しない間に別の痛風発作を発症することにより多発性関節炎の様相を呈し、歩行が困難となるなど著しいADL低下につながることも経験する。

痛風発作は、長年の持続する高尿酸血症によって関節内に析出した尿酸塩結晶によって引き起こされるものであるが、痛風罹患歴が長く、痛風発作を繰り返している患者ほど複数の関節腔内に多量の尿酸塩結晶が蓄積していることと痛風発作により血清尿酸値が変動することが原因となると考えられている。

今回、このように痛風発作が頻発する患者に対する治療について説明させて頂く機会を得たので、報告や私の経験をふまえて説明させて頂く。

 

非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)の使用法

痛風発作は、短時間作用型の強力なNSAIDの十分量の投与により出来るだけ速やかに消退させることは発作を遷延化させたり短期間で再発させないために必要である。

痛風発作に対しては、一般的にナプロキセン(ナイキサン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)などのNSAIDが使用されるが、典型的な痛風発作に対しては、通常の投与量では、十分な効果が期待出来ないことがあり、明らかな腎機能障害などが無ければナプロキセン1200mg、ジクロフェナムナトリウム150mg、ロキソプロフェンナトリウム360mgまでの範囲で1~3日間の投与を行う「NSAIDパルス療法」が推奨されている。

いずれの場合も痛風発作が消退傾向を示せば、NSAIDを通常量まで減量し発赤腫脹が消失し通常の歩行程度では痛みを感じなくなるまで服用を継続する。
NSAIDをあまり早期に中止すると発作が遷延化したり繰り返すことがあり注意が必要である。

 

ステロイド療法

多くの痛風発作は、十分なNSAIDの投与で治療可能と考えるが、「NSAIDパルス療法」を行っても改善しない場合や遷延性痛風発作、短期間に痛風発作を繰り返すような患者に対しては、ステロイド療法が有効である。
投与方法は、経口、点滴静注、筋注、関節腔内などが行われている。

膝関節の発作に対しては、関節腔内注射が比較的容易であり関節液採取による尿酸塩結晶の確認も行えるためデキサメタゾン4mgやベタメタゾン4mgを1%キシロカインと共に関節腔内注射を行っている。
しかし痛風発作の好発部位である母趾基関節などは関節腔内注射が難しいため同剤の点滴静注を実施することが多い。

トリアムシノロンアセトニドの筋注は、短期間に重度の発作を繰り返す患者では有効であることが多い。

プレドニゾロン経口投与は、1日量20mg以下7日間を超えない範囲で使用すると難治性痛風発作に対して有効である。

いずれもNSAIDとの併用が必要であり胃潰瘍などの消化器症状の発現や血糖値の上昇などに注意が必要である。

 

コルヒチン


コルヒチンは、痛風発作の頓挫薬であり既に痛風発作を発症している患者に対しては多くの場合無効である。
しかし、短期間に頻回に痛風発作を繰り返す患者では、「コルヒチンカバー」と呼ばれるコルヒチンの予防的投与が有効である。「コルヒチンカバー」は、発作や発作の予兆の有無に関係なく1日1錠のコルヒチンを継続的に投与する方法である。1~2ヶ月間を目安として実施することが多い。

1日1錠の投与では、コルヒチン投与による代表的な副作用である下痢は殆ど起きない。投与中は定期的な血液検査による経過観察が必要である。

また、コルヒチン服用により配偶者にダウン症児出生のリスクが高くなるとの報告があることから十分な説明が重要である。

 

尿酸降下薬の使用

痛風発作の最中に尿酸降下薬を開始してしまうと痛風発作が悪化したり遷延化することが多く、ガイドラインでも痛風発作中に尿酸降下薬は開始しないこととされている。

痛風発作は関節腔内に蓄積している尿酸塩結晶が不安定な状態となって好中球の貪食を受ける際の急性炎症反応とされているが、不安定化の原因として血清尿酸値の変動が大きく影響していると考えられる。
このため尿酸降下薬の投与は痛風発作発症の危険因子の一つである。

痛風発作の直後は、当該関節内の尿酸塩結晶が不安定な状態であり、再発作の危険性が高いため発作終了後2週間程度が経過してから血清尿酸値が急激に低下しないように少量の尿酸降下薬から開始することが必要である。

痛風発作を誘発しないための血清尿酸値降下率は、20%程度との報告があり、アロプリノールの初回投与量は、50mgから100mg、ベンズブロマロンの初回投与量は、12.5mg~25mgが良いと考えられる。

ベンズブロマロンの投与における血清尿酸値降下率についての検討を行ったので後述する。

尿酸降下薬開始後の痛風発作

前述のように十分注意して尿酸降下薬を少量から開始し血清尿酸値を降下させても尿酸降下薬開始後に痛風発作を起こしてしまうことがある。特に痛風罹患期間が長く、難治性、遷延性痛風発作や頻回に発作を繰り返すような患者では、尿酸降下薬開始後に痛風発作を発症する危険性が高いと考えられる。

患者には、尿酸降下薬を服用して血清尿酸値が下降しても関節内の尿酸塩結晶が消失するまでの1年間程度は、痛風発作が起きうることや尿酸降下薬開始後の2ヶ月間ほどは特に痛風発作が起きやすくなることなどを十分に説明し理解して頂くことが必要である。そうしないと痛風治療への疑念を生じて治療を中断してしまう恐れがある。

尿酸降下薬開始後に痛風発作が起きた場合は、尿酸降下薬の服用はそのまま継続しながらNSAIDを併用することが原則である。

痛風発作時に尿酸降下薬を開始しないことと混同して尿酸降下薬の服用を中止してしまうことがあるため特に患者に対して注意が必要と考える。
NSAIDの投与は、前述の尿酸降下薬投与前の痛風発作に対するものと同様であり、十分量のNSAIDを発作が消失するまで尿酸降下薬と併用する。
「NSAIDパルス療法」が有効である。
発作の初期の比較的軽い段階から服用開始した方が効果的なことが多く、頻回に発作を繰り返すような患者に対しては、尿酸降下薬開始後の数週間NSAIDを予防的に併用することもある。
この場合のNSAIDの服用量は常用量以下とし消化性潰瘍などの副作用に留意する必要がある。

同様にコルヒチンの予防的投与を行うことがある。
「コルヒチンカバー」として尿酸降下薬開始後の数週間から2ヶ月間程度の期間尿酸降下薬服用時に1日1錠のコルヒチンを継続して投与する。

いずれにしてもNSAID、コルヒチンの予防投与は、痛風発作が頻発する難事例に対して尿酸降下薬によって血清尿酸値が治療目標に到達し安定するまでの期間の使用に限定し安易に習慣化、長期化しないよう注意が必要である。

以上の治療を行っても痛風発作が消退しない場合や繰り返す場合は、プレドニゾロン10~20mg/日7日間以内の経口投与や トリアムシノロンアセトニド40mg筋注を行う場合もある。

ベンズブロマロン初回投与量の検討

ベンズブロマロンは25mgからの開始が一般的であるが、25mgでも血清尿酸値の急速な低下により開始初期に痛風関節炎を誘発してしまうことがある。
そこで当院では、ベンズブロマロンの初回投与量を12.5mgとしてその後血清尿酸値の推移を見ながら25mgへ増量することとしている。

ベンズブロマロンの至適な初回投与量を検討するため12.5mg開始群と25mg開始群での比較を行った。
方法として 平成17年4月以降に初診した高尿酸血症、痛風患者中尿酸、クレアチニンクリアランス検査にて尿酸排泄低下型高尿酸血症と診断した症例の内、尿管結石の既往を有するもの、腹部超音波検査にて腎結石を認める症例を除いた40例(12.5mg開始群20例、25mg開始群20例)を対象とした。
原則として受診1ヶ月以内に痛風関節炎を発症している症例を12.5mg開始群、それ以外の症例を25mg開始群とした。

症例は全例男性で、年齢、罹患期間、発作回数などに有意な差は無かった。
初診時血清尿酸値は、12.5mg開始群8.4±0.77mg/dl、25mg開始群8.4±0.8mg/dlで、投与開始2週間後の血清尿酸値は各々6.7±1.2mg/dl、5.8±1.2mg/dl、血清尿酸降下率は、各々20%、31%であり25mg開始群で有意な血清尿酸値の低下を認めた(表1)

表1 12.5mg 25mg
初診時血清尿酸値(mg/dl) 8.4±0.77 8.4±0.82
2週間後血清尿酸値(mg/dl) 6.7±1.2 5.8±1.19
降下率(%)  20 30

12.5mg開始群では、13例で3ヶ月後までに25mgへ、1例で50mgへの増量を行った。25mg開始群では、3ヶ月後までに12.5mgへの減量が1例、50mgへの増量が4例認めた。
3ヶ月後の血清尿酸値は、12.5mg群、25mg群、50mg群で各々5.4、5.9、5.6mg/dlでいずれも血清尿酸値のコントロール目標である6.0mg/dl以下を達成出来た(グラフ1)

グラフ1



痛風発作の誘発を抑制するためには、20%程度の尿酸降下薬が適当との報告もあることからベンズブロマロンの初回投与量は、12.5mgが適当ではないかと考えている。特に頻回に痛風発作を繰り返すような痛風患者に対しては、ベンズブロマロン12.5mgからの開始を推奨している。

まとめ

言うまでもなく痛風治療の基本は、適切な尿酸コントロールである。
しかし、痛風発作中は尿酸降下薬を開始出来ないため頻回に痛風発作を繰り返す患者では、治療に苦慮することがあると思う。
また、尿酸降下薬開始後も痛風発作を繰り返すことによって治療が中断してしまったり、尿酸降下薬の増量が出来ないことも良く経験する。

痛風発作は、経過の早い急性関節炎なので早期から出来るだけ強力な消炎鎮痛剤などにより短期間で寛解させ再発作を抑制しながら血清尿酸値を治療目標である6.0mg/dlまで2ヶ月間程度をかけて緩徐に下降させることが重要である。

尿酸降下薬開始後2ヶ月間ほどは痛風発作を起こしやすく注意が必要であるが血清尿酸値が上記の治療目標に達して安定すると痛風発作の頻度は減少していく。

1年以上良好な尿酸コントロールが行われていると痛風発作の危険性はかなり低くなると考えられる。

注意

本文は、痛風治療に携わる医師向けに記述したものです。実際の治療に当たっては、個々の状況や検査結果によって治療法や治療経過に違いがあります。薬の服用に当たっては必ず主治医の指示に従って下さい。本文中の治療法は、日本痛風・核酸代謝学会のガイドラインや専門医の意見に沿ったものですが、一部健康保険の適応外の治療が含まれていますのでご注意下さい。


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